「レバレッジETFは減価するの?」「レバレッジETFの長期保有は危険なの?」「どうすれば減価を防げるの?」←こんな人に参考になる記事です。
特にSPXL投資家の皆様は、ぜひ最後までご覧になってください。
さて、株式投資をやっていると、こんなフレーズをよく聞くと思います。
- レバレッジETFは、減価するから気を付けること
もう一つ、これもよく目にすると思います。
- レバレッジETFは、短期間で高いリターンを求めるのにオススメ
ほとんど定説となっていて、様々なサイトを片っ端から見ていっても当り前のように語られていることですね。
・・・ところが、実はこれ、間違った認識なんです。
このようなミスリードによって、レバレッジETFに対する理解を誤って、抵抗感を持っている人が非常に多いと思います。
僕は実際にレバレッジETFであるSPXLを1,000万円ほど保有していますので、今回はレバレッジETFについて語られる「減価の嘘」と「正しい扱い方」を、お伝えしていきたいと思います。
それでは、以下ご覧ください。
レバレッジETFとは
まず初めにレバレッジETFについて簡単におさらいしてみたいと思います。
レバレッジETFとは、連動する指数の値動きに対して、「てこの原理」で指数の2倍,3倍といった値動きになるように設計されたETFのことを指します。
指数の動きに対して同じ方向へ連動するレバレッジ(ブル型)と、指数の動きに対して反対方向へ連動するインバース(ベア型)があります。
図1は指数の値動きに対して2倍に動くブル・ベアファンドのイメージです。
(図1)<出所>SBI証券「指数の値動きに対して2倍に動くブル・ベアファンドのイメージ図」
例えば、日経平均レバレッジ・インデックス」に連動を目指す代表的なETFには以下のような金融商品があります。
銘柄コード | 銘柄名 |
1458 | 楽天ETF-日経レバレッジ指数連動型 |
1570 | NEXT FUNDS 日経平均レバレッジ・インデックス連動型上場投信 |
1365 | ダイワ上場投信-日経平均レバレッジ・インデックス |
1358 | 上場インデックスファンド日経レバレッジ指数 |
米国で有名なレバレッジETFには以下のようなものがあります。SPXLは常に米国ETF人気ランキング上位のETFですね。
ティッカーシンボル | 銘柄名 |
SPXL | Direxion デイリーS&P500ブル3倍 ETF |
SPXS | Direxion デイリーS&P500ベア3倍 ETF |
TMF | Direxion デイリー20年超米国債ブル3倍 ETF |
TMV | Direxion デイリー20年超米国債ベア3倍 ETF |
レバレッジ(インバース)ETFの減価問題とは
以下のような主張は多くのサイトやブログで日々語られています。
「レバレッジ(又はインバース)ETFは、減価するから気を付けること」
例えば、図2をご覧ください。SBI証券のホームページより引用したものです。
(図2)<出所>SBI証券「ブル・ベアファンドの対象となる指数の値動きと基準価額推移のイメージ図」
このように大手企業のサイトでもレバレッジETFの減価が注意喚起されていますので、多くの人に「レバレッジETFは減価する」ということが信じられています。
このレバレッジETFが減価するという主張の理屈をおさらいしてみましょう。
例えば、投資元本100万円を、ある指数と、指数に連動するブル3倍レバレッジETFに、それぞれ投資した場合のリターンを考えてみます。
指数
1日目に-1.96%下落すると98.06万円になります。2日目に+2.00%上昇すると100万円に戻ります。以降、-1.96%と+2.00%を何回繰り返しても、評価額は98.06万円と100万円を繰り返します。
レバレッジ3倍
1日目は-5.88%下落して94.12万円になります。2日目は+6.00%上昇して99.77万円になります。以降、-5.88%下落と+6.00%上昇を繰り返すごとに、どんどんと評価額が減少していくことになります。
これがいわゆるレバレッジETFが減価すると考えられている所以ですね。
チャートで表現すると図3のようになります。
(図3)レバレッジETFは減価するという主張の原理
投資家を惑わす数字のマジック
しかし、図3の考え方は根本から間違っています。
-1.96%と+2.00%を繰り返すことで指数が減価していないように見えるよう都合よくリターンが調整されているからです。
減価していることを検証するのであれば、価格変動幅を等しく設定すべきでしょう。
では、価格変動幅を等しく-2.00%と+2.00%を交互に繰り返すボックス相場の場合を見てみましょう。図4をご覧ください。
(図4)指数も原価していることが分かる
このように同じ騰落率を繰り返してみると「指数も減価している」ことが分かります。
レバレッジをかけなくても減価するということです。
そして、指数とレバレッジETFの乖離に目をやってみると、レバレッジETFのほうが大きく減価していることが分かります。
これらのことから、あえて減価という言葉を使いたいのであれば、
「ボックス相場で指数は減価する。レバレッジETFは減価が拡大する。」
という表現になりますね。
減価の正体は「複利の効果」
しかし、そもそも減価という表現自体が実は適切ではありません。
なぜなら株価が上昇と下落を繰り返すことで評価額が減少していく原因は、
「複利の効果」
だからです。
適切に表現するならば「ボックス相場では複利の効果によってリターンが押し下げられる」ということになります。
仮に、この複利の効果の1つの側面であるデメリット「減価」と表現したいのであれば、雪だるま式に増えていく複利の効果のメリットを「増価」と言わなければおかしいですよね。
でも、増価などという表現は聞きません。
複利の効果については広く知られている基礎的な金融知識なのですが、実は意外と正しくその効果を理解されていません。
単利と複利とは
まず単利と複利についておさらいしていきます。
金融商品のリターンは「単利」か「複利」の何れかに分かれます。
(図5)単利と複利の仕組み
単利とは、当初の投資元本に対するリターンを得られる仕組みになっています。
複利とは、投資元本に対するリターンを投資元本に組み入れて、元利合計に対するリターンを得られる仕組みになっています。
複利の効果とは
複利の効果を厳密にいうと、複利で得られる利益と単利で得られる利益の差分ということになります。以下の計算式で求めることができます。
計算式
複利の効果=(複利リターン)-(単利リターン)
図5の3年目を見てみると、複利リターンが115.76万円、単利リターンが115万円となっていますので、複利の効果によるリターンは差分の0.76万円になります。
それでは複利の効果を、株価が上昇する時、株価が下落する時、ボックス相場の時、どのような効果を発揮するのか見てみます。
複利の効果:株価上昇時はリターンを押し上げる
図6は元本100万円が年率5%で上昇し続けた場合のチャートを示しています。
(図6)複利の効果:株価上昇時はリターンを押し上げる
このようなチャートを用いて「複利の効果で雪だるま式に資産を増やそう」というキャッチフレーズは至る処で見かけますよね。
複利の効果の代表的なメリットです。
しかし、雪だるま式メリットばかりを強調することによって、あたかも複利の効果は投資元本を加速度的に増加させるだけであるかのような錯覚を招く原因の一つになっています。
複利の効果:株価下落時はリターンを押し上げる
図7は元本100万円が年率-5%で減少し続けた場合のチャートを示しています。
(図7)複利の効果:株価下落時はリターンを押し上げる
単利リターンでは元本がゴリゴリ削られて無くなってしまいますが、複利の効果によってリターンが押し上げられます。
これも複利の効果のメリットです。
複利の効果:ボックス時はリターンを押し下げる
図8は元本100万円が年率-5%と5%でボックスを形成した場合のチャートを示しています。
(図8)複利の効果:ボックス時はリターンを押し下げる
ボックス相場では複利の効果によってリターンが押し下げられます。
これは複利の効果のデメリットですね。
リスク(ボラティリティ)が大きいほど複利の効果は増幅する
また、複利の効果は、リスク(ボラティリティ)が大きいほど増幅するという特徴を持っています。
図9をご覧ください。
(図9)ボラティリティの大小によって、複利の効果は増減する
どのパターンも単利リターンは等しく30%であるにも関わらず、複利リターンは価格変動リスク(ボラティリティ)が大きいほど押し下げられていることが分かります。
複利の効果は、ボラティリティが小さい時はリターンを押し上げますが、ボラティリティが大きい時はリターンを押し下げる効果があるということです。
このように、複利の効果はデメリットの側面もあるということですね。
この側面を正しく認識できていなければ対策も打ちようがありません。
複利の効果を正しく理解する
複利の効果にはメリットとデメリットの側面があることが分かりました。
前項では価格変動リスク(ボラティリティ)が大きいほど複利リターンが増幅することを確認しました。
ここではリスクを大中小でそれぞれどのような複利の増幅効果が発揮されるか検証します。
【複利の効果】株価が上昇する時
図10は、株価上昇時の複利リターンを示しています。リスク小は年率5%、リスク中は年率10%、リスク大は年率15%としています。
(図10)株価上昇時の複利リターン
いわゆる雪だるま式に資産が増えるリターンを示すもので、複利の効果を解説される時に非常によくみかけるチャートですね。
株価上昇時は、複利の効果によってリターンが押し上げられます。
株価上昇時は、リスクが大きいほど複利の効果(リターン押し上げ効果)が増幅します。
30年後のリターンを見てみると、リスク小の332.2%に対して、リスク中は1644.9%(5.0倍)、リスク大は6521.2%(19.6倍)です。
リスクの違いは2倍~3倍ですけれど、複利の効果によってリターンは非常に大きく乖離していくことになりますね。
この複利の効果のメリットの側面は、ほとんどの投資家が理解されていることと思います。
【複利の効果】株価が下落する時
図11は、株価下落時の複利リターンを示しています。リスク小は年率-5%、リスク中は年率-10%、リスク大は年率-15%としています。
(図11)株価下落時の複利リターン
例えば7年後のリターンを見てみると、リスク小が-30.2%のリターンであるのに対して、リスク中は-52.2%(1.7倍)、リスク大は-67.9%(2.2倍)です。
このようにリスクが2倍~3倍になっても、ドローダウンは抑制されていることが分かります。
そしてチャートの中央あたりを最大のリターン乖離として、時間が経過するほど乖離が小さくなっていますね。
株価下落時は、複利の効果によってリターンが押し上げられます。(ドローダウンが抑制される)
単利リターンと違って複利リターンは元利合計されるため、ゼロに近づいてもなかなかゼロにはなりません。
個人的にはブラックホールみたいなイメージですね。ブラックホールは中心に近づくほど時間の経過が長くなるため、事象の地平線の外側からは永遠に中心に辿りつく姿を捉えることはできません。
株価下落時は、リスクが大きいほど複利の効果(リターン押し上げ効果)が増幅します。
ただし、いくら下落時のドローダウンを抑制するからと言っても、リスクが大きくなればなるほど下落幅も大きくなりますので、リスクを取り過ぎることは危険です。
自分のリスク許容度の範囲内でリスクを調節すべきでしょう。
【複利の効果】ボックス(レンジ)相場
図12は、株価がボックス(レンジ)相場の複利リターンを示しています。リスク小は年率-5%~5%、リスク中は年率-10%~10%、リスク大は年率-15%~15%としています。
(図12)株価がボックス(レンジ)相場の複利リターン
株価が上下を繰り返すと、複利の効果によってリターンが押し下げられます。
ボックス相場では、リスクが大きいほど複利の効果(リターン押し下げ効果)が増幅します。
これが「レバレッジETFは減価するから注意すること」というミスリードを招く原因です。
正しく表現するのであれば、「レバレッジETFは複利の効果を増幅するため、ボックス相場における複利のリターン押し下げ効果も増幅される」であるべきです。
前者の表現では、あたかもレバレッジETFが創出するデメリットのように誤解を与えてしまいますよね。レバレッジの効果ではありません。レバレッジによって、複利の効果を増幅しているのです。
ボラティリティが大きいほど複利の効果は増幅されます。ということは、例えば新興国ETFや小型株・中型株のようなボラティリティの高い金融商品にも同様のことが言えるはずです。
ところが、「新興国ETFは減価するから注意すること」などという解説は聞きませんよね。
ポイント
リスクが大きいほど、複利の効果におけるメリット、デメリットともに増幅することを理解しておく必要があります。
日本人の複利に関する理解不足
これは少し余談となりますが、複利の効果を正しく理解できていない人が多いことは統計からも分かっています。
2016年、我が国で初めて金融リテラシーに関する大規模調査が金融広報中央委員会によって行われました。
図13は、その調査の設問です。Q19が複利の効果に関する設問になっています。
(図13)<出所>金融広報中央委員会発表資料「金融リテラシー調査の結果」
Q19の正解は1番です。
元利合計に102%かける計算を5回繰り返すだけで答えを求められますが、米国人の正答率が75%に対して、日本人は42.9%と残念な結果になっています。
日本は金融リテラシー後進国です。これは先述した株価上昇時の複利の効果を、ごく単純化した初歩的な設問ですが、6割が答えられませんでした。
では、株価下落時の複利の効果は?ボックス時の複利の効果は?
これを設問にしたら、ほとんどの人が正解を答えられないのではないでしょうか。
もし複利の効果を正しく理解できていなかったとしても、恥ずかしいことではありません。
減価を防ぐために有効な戦略とは
減価という表現は正しくないと思いますので使いたくないのですが、あまりに広く浸透してしまっている用語なので敢えて使います。
複利の効果によって、①上昇時は株価押し上げ、②下落時は株価押し上げ、③ボックス時は株価押し下げ、という効果があることが分かりました。
では、複利の効果のメリットを活かしてデメリットに対処するにはどのような手立てが有効か考えてみます。
大きくて立派な船に乗ろう
まず、そもそも株価押し下げ効果を回避することが第一に考えるべきことですね。
つまり、株価が上昇しやすい市場で戦うこと、逆に言い換えればボックス相場になりやすい市場では戦わないということです。
世界有数の資産家であり投資の神様ウォーレン・バフェットの名言にこういう言葉があります。
経営成績がよくなるか悪くなるかはどれだけ効率的に舟を漕げるかという点よりも、どのビジネス船に乗り込むかという点が大きく影響する。
沈む船の中でどれだけ頑張って漕いでも効率が悪いですよね。漕げば進む船に乗るべきです。
では日本株式市場を見てみましょう。
(図14)日経平均の超長期チャート
1989年のバブル崩壊以降、1万4000円~2万3000円のボックス圏内を行ったり来たりを繰り返しています。
複利の効果のデメリットの側面を十二分に発揮してしまう酷い株式市場と言わざるを得ません。
ところが、日本人の個人投資家の9割以上、ほとんどの投資家が日本株式市場に投資しているというのが実態です。
証券会社は、顧客に頻繁な売買をしてもらうことで手数料を稼いでいますから、複利の効果のデメリットの側面を、ことさら顧客に説明したくないという動機が働きます。
ですから、証券会社や株投資のサイトでは正しく複利の効果が解説されない。証券マンも説明しない。個人投資家は複利の効果を正しく認識できない。日本株式市場に投資する。このような悪循環が続いているのではないでしょうか。
では、米国株式市場を見てみましょう。
(図15)<出所>ジェレミー・シーゲル氏の著書「株式投資」
米国株投資家にはもはや常識的なジェレミー・シーゲル教授の著書「株式投資」に掲載されているチャートです。
綺麗な右肩上がりですね。各時代ごとに拡大すると結構な騰落はありますし、過去と同じ未来が続くかは誰にも分かりませんが、少なくともこれまでを振り返れば誰もが幸せになれる株式市場でした。
このように、まず複利の効果「①上昇時は株価押し上げ」のメリットを十二分に活かせる株式市場で戦うことが重要です。
戦場を間違わなければ、既に半分勝利したといっても過言ではないと思います。
逆に言うと、戦場を間違っては小手先の技でどうこうしようと失敗する可能性が高いということですね。
複利の株価押し下げ効果に対策を講じる
次に、複利の効果「③ボックス時は押し下げ」について対策を考えてみます。
一つには、ボラティリティが小さい(アップサイドもダウンサイドもリスクが小さい)金融商品を選択するということが対策として考えられます。
一つには、ダウンサイドリスクを軽減するか、アップサイドリスクを拡大するといったことが考えられます。
図16はボックス時の押し下げ効果に対する対応策を示しています。理解しやすいようにチャートの作成元データも載せておきます。
(図16)ボックス時の押し下げ効果に対策する
このように何らかの対策によってダウンサイド又はアップサイドのリスクを改善することができれば、複利の効果によるボックス時のリターン押し下げを軽減又は相殺することが可能となります。
僕は、これらの対策を実践しています。
弊ブログをご覧の方にはお馴染のSPXLリスクコントロール・ポートフォリオですね。ご存知ない方は以下の記事を、ぜひご覧ください。
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SPXLリスクコントロール・ポートフォリオ│SPXL投資の新しいカタチ
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SPXLリスクコントロール・ポートフォリオの減価対策
それでは、SPXLリスクコントロール・ポートフォリオがどのように押し下げ効果に対策をできているのか見ていきます。
2019年12月時点、僕は172,127ドル(1,887万円)を当ポートフォリオで運用しています。
複利の効果のメリット対応状況
まず、複利の効果である「①上昇時は押し上げ」「②下落時は押し上げ」の対応状況を見ていきます。
SPXLリスクコントロール・ポートフォリオは、SPXLとキャッシュを一定割合(推奨は50:50)で保つことによって、SPXL単独を保有するよりもリスクを抑制しています。
つまり、SPXL自体はレバレッジ3倍ETFですが、SPXLリスクコントロール・ポートフォリオ全体で見た時のレバレッジを1.5倍に調節することで、アップサイドリスクとダウンサイドリスクを抑制しています。
ちなみにレバレッジを1.5倍に調節している背景には、ジェレミー・シーゲル教授の調査結果も頭に入っています。
シーゲル教授は過去200年における株式市場の膨大のデータを分析した結果、保有期間に応じた最適な株式の保有割合を算出しています。下表をご覧ください。
リスク許容度 | 保有期間 | |||
1年 | 5年 | 10年 | 30年 | |
超保守派 | 9.0% | 22.0% | 39.3% | 71.4% |
保守派 | 25.0% | 38.7% | 59.6% | 89.5% |
リスク容認派 | 50.0% | 61.6% | 88.0% | 116.2% |
リスク選好派 | 75.0% | 78.5% | 110.1% | 139.1% |
<出所>ジェレミー・シーゲル教授著「株式投資(ポートフォリオ配分における株式の推奨割合)」
右下の方に行くと株式の保有割合が100%を超えてレバレッジをかけることが最良の結果を生むとしています。
僕のマイポートフォリオはほとんど全て株式です。そのうちSPXLリスクコントロール・ポートフォリオは約75%。つまりポートフォリオ配分における株式の割合は約138%になります。
シーゲル教授のマトリクスでいえば保有期間30年ほどのリスク選好派ということになりますね。
シーゲル教授の研究結果だからといって、確からしさを検証できないものを鵜呑みにはしていないのですけれど、このレバレッジ倍率を形成する一つの根拠にはなっています。
*
図17は、実際のSPXLリスクコントロール・ポートフォリオの運用実績から、同額(約765万円)のSPXLを保有していたとした場合の時価評価額の推移を示しています。
(図17)SPXLリスクコントロール・ポートフォリオとSPXL
最大のドローダウンを記録した2018年12月の暴落時には、SPXLリスクコントロール・ポートフォリオによるドローダウン抑制効果+$15,858(+177.5万円)が得られていますね。
ダウンサイドリスクを抑制することによって、複利の効果「②下落時は押し上げ」のメリットも半減していることにはなるのですけれど、僕が長期保有できるリスク許容度の範囲内にリスクにコントロールすることの方が重要だと考えています。
*
また、SPXLリスクコントロール・ポートフォリオはアップサイドリスクも半減しますので、複利の効果「①上昇時は株価押し上げ」のメリットも抑制することになります。
しかし、リターンを抑制すると言っても、それでも指数(市場平均)を大きく上回るリターンは期待できますので、我が家のライフプランにとって十分かなと思っています。
複利の効果のデメリット対応状況
次に、複利の効果である「③ボックス時は押し下げ」の対応状況を見ていきます。
当ポートフォリオは独自のリバランスルールによって、安く買って高く売ることが可能になります。独自といっても簡単なルールですので、誰でも運用できると思います。
実際に2018年1月からリバランスしてきた実績をプロットしたチャートが図18になります。黒丸がSPXL購入、赤丸がSPXL売却です。
(図18)SPXLリスクコントロール・ポートフォリオのリバランス実績
一見して安く買って高く売っていることが分かると思います。
複利の効果のデメリットの側面について以下のように対策されています。
- 安く買うことで、その後の上昇時にアップサイドリスクを拡大する
- 高く売ることで、その後の下落時にダウンサイドリスクを軽減する
図19は、SPXLリスクコントロール・ポートフォリオのキャッシュ部分を除きSPXL部分だけに着目して、リバランスした場合としなかった場合を比較しています。
(図19)独自リバランスによるリターンの押し上げ効果
今から振り返ってみると2018年~2019年3月は、まさにボックス相場になっていますね。複利の効果「③ボックス時は押し下げ」によってリターンが押し下げられる相場環境です。
単純にSPXLを買い持ちしていた場合に比べて、当ポートフォリオは一連のリバランスによって2019年3月末の時点で+$2,838(+31.8万円)のリターン押し上げ効果を得られています。
実際の運用成果からも対策が効果を発揮していることを確認できますね。
まだ1年と少しの運用期間ですが、2年、3年と時間が経過するほどのリターン押し上げ効果は雪だるま式に増えていくことでしょう。
まとめ
雪だるま式に資産を増やそう
よく「レバレッジETFは短期的に大きなリターンを得るのに適している」などと解説されていますけれど、大きな間違いです。
なぜなら資産運用の基本は「長期保有」なのですから。
証券会社や株投資のサイトはきちんと解説しません。株投資ブロガーも詳しく解説している方をあまり見かけません。
受け手の知識不足を逆手にとって、資産運用において好ましくない短期投資を勧める行為には、何らかの意図もしくは理解不足を感じます。
まともな解説が少なければ誤った理解を植え付けられてしまいますので、言葉足らずにレバレッジETFは減価するなどと書くのはやめた方が良いと思います。
しかし、ひとたび複利の効果を正しく理解すれば、そのメリットを活かしためにどうするか、デメリットを抑制するためにどうするか、考えることが出来るようになります。
複利の効果を増幅させるレバレッジETFだからこそ、しっかりとメリットを活かし、デメリットを抑制する方策を考え、ガッチリと長期保有できる状態にすべきでしょう。
そうすることによって、複利の効果の大きなメリットを享受できるのです。
「大手企業のサイトに書いてあるから」「著名人が言っているから」、そんな風に誰かの言葉を鵜呑みにせず、自分の頭で考えることが大事だなと感じる今日この頃です。

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