ゆう(@yu_kabu_life)です。
パウエル米連邦準備理事会(FRB)議長は日本時間21日午前3時から会見を開き、フェデラルファンド(FF)金利の誘導目標を2.25-2.50%のレンジに据え置くことを全会一致で決めたことを発表しました。
19日と20日の米連邦公開市場委員会(FOMC)定例会合を受けてのことです。
また、バランスシート縮小も順調にいけば9月に停止することが示唆されました。
これにより年内中の利上げは見送られることが確実となりました。
事前にブルームバーグがまとめたエコノミスト予想によれば、市場は「年内の利上げ回数見通しを1回、計2回としていた昨年12月の予想から下方修正するとともに、2020年にもう1回の利上げを見込む」とされていたことから、市場予想よりもハト派寄りの結果と見られます。
FOMC定例会合の経済予測とFF政策金利誘導目標
下表はFOMCの発表資料からまとめたものです。
これを見るとFOMCメンバーが米国経済の成長減速やインフレ後退の見通しから利上げ停止を正当化していることが分かります。
これまで17年から18年にかけて計7回の利上げを慣行してきたことでイールドカーブは十分にフラット化しており、リセッションの兆候である逆イールドカーブ(長短金利の逆転)現象が発現する寸前でした。
これ以上の利上げ強行は、逆イールドカーブを引き起こしかねませんでしたので、今回の決定はリセッションのリスクを後退させるものです。
パウエルFRB議長(21日午前3時発表の冒頭)
FF政策金利据え置きでも株式市場は上値が重い
さて、発表を受けた市場の反応はどうでしょうか。
米国債10年の利回りは-3.43%低下し、約1年ぶりの水準となる2.527ポイントとなりました。
20日の株式市場では金融セクターが下げを主導し、ゴールドマンサックス(GS)が-3.38%、JPモルガンチェース(JPM)は-2.13%。
S&P500種指数は前日比-0.29%(-8.34)の2,824.23、ダウ平均株価が前日比-0.55%(-141.71)の25,745.67と下落しました。
一方ハイテク銘柄の多いナスダックは前日比+0.07%の7,728.97(+5.02)と僅かにプラスで取引を終えました。
さて、なぜ株式市場は下落という反応を返したのでしょうか。
通常、FRBは年8回開催するFOMC定例会合のうち、3月・6月・9月・12月の年4回、経済予測とFF政策金利の見通しを発表しています。
今回は特にFOMCメンバーの金利見通しを分布図にしたドットチャート(ドットプロットとも言う)の行方に注目が集まっていました。
<出所>ブルームバーグ
そもそもFF(フェデラル・ファンド)金利とは、銀行間で資金の過不足を調整するための貸し借りに用いられる金利のことです。
FF金利の動向によって全ての金利が変動しますが、その影響は金利だけにとどまらず、株式市場や資源価格、企業活動や為替など経済全般に影響を及ぼします。
本来、今回発表された「FF金利の誘導目標据え置き」によって債券市場から株式市場へ資金が流れ、企業は資金を調達しやすくなりますので、株式市場にとってポジティブサプライズのはずでした。
相場全体の重しとなった原因は米中貿易摩擦の動向によるものです。
また米中貿易摩擦の行方が不透明に
前日19日に米中貿易交渉で中国側が米国の要求に抵抗していると報じられていたことに加えて、翌20日にはトランプ大統領自身から「対中制裁関税の解除は議論していない」ことや「中国製品への追加関税を相当期間維持することを検討している」ことが明らかにされました。
これまでトランプ大統領は一貫して「米中貿易交渉は非常に上手く言っている」と繰り返し発言し、エコノミストらも既に市場は米中貿易交渉の早期解決を織り込んでいるとの見解を示していました。
トランプ大統領(3月20日の演説)
ここにきて仮に米中交渉で大きな進展がないとすれば、市場にとってはネガティブサプライズでしかありません。投資家は今後の展開を注視しておく必要がありそうです。
一方でFF金利の引き上げ中止を再三に渡って希望していたトランプ大統領にとっては僥倖と言えそうです。
FF政策金利の引き上げが慣行されていれば、リセッションリスクを意識せざるを得ません。2020年に大統領選挙を控えているトランプ大統領にとってリセッションの発生は致命傷になり得ます。
今回の据え置き措置によってリセッションリスクが後退することで、トランプ大統領は対中国交渉を継続できる余地が拡大したと見ることもできそうです。
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